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二月に入りますと、すぐに節分そして立春となり、暦の上ではもう春になります。節分と言いますと、いきなり私事になって申し訳ありませんが、私たち夫婦は二十五年前の節分に結婚いたしました。今年は銀婚式となります。私たち夫婦はともに仏教徒なのですが、妻がカトリック系の大学を卒業している縁で、その大学の聖堂で結婚式を挙げました。たいへん寒い日で、しかも平日であったものですから、出席をしていただいた方々の顰蹙を買ったようですが、私の父母がやはり節分の日に結婚しており、それにあやかっての結婚式でした。その時結婚式を司祭してくださった神父様は今もご壮健でいらっしゃって、毎年クリスマスに神の言葉が書かれたカードを送ってくださいます。彼から見れば私どもは異教徒であるのでしょうが、いつまでも慈しんでくださり、私たちはそのことを本当にありがたく思っています。そうした社会のいろいろな人に見守られて、私たちは銀婚式を迎えることができたのだといつも夫婦で話をしています。俳句の先輩には金婚式を迎えられた例が結構あるようですが、私たちは金婚式には今までと同じ歳月をさらに経ねばなりません。でも、何とかそれまで夫婦して健康に過せればと願っています。
さて、脱線が長くなってしまいましたが、二月は名のみの春、実際には一年中で最も寒い時期です。寒くて体が冷えますと、免疫機能が低下して風邪を引きやすくなります。でも、私たちの周りには一見風邪かと思われながら、じつは風邪より重篤な病気がいくつもあります。「風邪は万病の元」という昔からの言伝えがありますが、風邪をこじらせて厳しい病気になることもあり、風邪と思っていたらもともと風邪とは似て非なる病気であることもあります。今回はそうした病気の一つとして川崎病という病気のお話をしようと思います。
むつまじや追儺の宵の人の声 才磨 小さなる小さなる主を踏まさるる 汀女 デートには行く気でをりぬ春の風邪 純也
川崎病というのは、日本の川崎富作先生が1967年に発見された病気で、発見者の名前を冠した病名であって、地名の川崎とは何ら関係はありません。罹患するのはほとんどが四歳未満の小児ですが、まれには成人にも起こっています。どんな病気かというと、三十八度を越える高熱が続き、抗生物質に反応しません。よく観察すると、頚部のリンパ腺が腫れ、眼結膜が充血することがあります。兎の目のように赤くなった目を見つけると診断が容易になります。口唇も赤くなり、舌は苺のようなぶつぶつができて赤く腫れます。皮膚に不定形の発疹が出ることもあります。手足の皮膚がてかてかと光って硬いむくみが出現することもあります。しかしこれらの症状が常に全部出揃うというわけではありません。ですからこれらの症状のいくつかを見つけると川崎病を疑うことになります。
この病気が恐いのは、高熱が出たり今述べたような症状が出現したりすることではなく、これらの症状がおさまった後、心臓の冠動脈に動脈瘤ができることがわかってきたことです。その動脈瘤のために冠動脈の血流に血栓ができやすくなって、いわゆる狭心症や心筋梗塞を起こし突然死の原因になるのです。小さな子供なのに成人病のような症状を呈するのですから、気の毒というしか言いようがありません。でも最近になって、早期に川崎病であることが判明すると、ガンマグロブリンという血液中にある免疫を司る蛋白質を大量に投与すれば、冠動脈瘤の発生を抑えるということがわかってきました。ですからこの病気の予後は、いかに早く診断をつけられるかにかかっているのです。でも発熱をしてくる小児の大多数は、いわゆる風邪の仲間の感染症ですから、その中から川崎病を見つけ出すのは結構大変なことなのです。いつも子供の発熱を診る際には、川崎病ではないかと疑いを持って診る必要があります。そして疑いがある時には、大きな病院の小児科にいちはやく紹介し、専門家による心エコー検査を受けて冠動脈瘤の有無を確認してもらわねばなりません。
この病気は日本全国で年間二千人ぐらいの発症があり、多い年には発症数が五千人を超えたこともあります。でも、この川崎病の原因はいまだによくわかっていません。症状の類似した病気に溶血連鎖球菌(溶連菌)の感染症がありますが、これは抗生物質に反応し治療法も確立しています。溶連菌の仲間が原因ではないかという疑いを持っている学者もいますし、そのほかまだ確認できていないウイルスなどの感染症だろうという学者もいます。一方ではアレルギーが関与しているのではないかと考える意見もあり、ダニや洗剤犯人説なども唱えられていますし、さらには遺伝的な因子の関与を疑う学者もいますが、残念ながら決定的な証拠は挙がっていません。そういう意味でもこの病気の全体像があいまいで、診断を決定的にする安直な指標もありません。ですから診断の難しい恐い病気となっているのです。
私たちのまわりにはまだまだよくわかっていない病気もあり、一見風邪と見まがうような症状で始まる病気も多々あります。体調がすぐれない時に、すぐに風邪だと決め込んでしまう人をよく見かけますが、風邪と決め込んで病気を放っておくうちに病状が進んでしまう場合があります。様子がおかしい時には、自分勝手に診断せずに医師を受診してください。早く病気を発見することは、治療をしやすいことに通じます。皆様も是非信頼できるかかりつけの医師を持たれて、何でも早い目に相談されることをお勧めします。
(平成十五年二月)
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